JUNQUO的博客

「もっと知性にやう゛ぁんを」を座右の銘にするにむらじゅんこのヨロズ帳
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仏越画家1  フランスとベトナム


前回のエントリーで常玉のことを書いたが、どうして日本はアジア美術にこんなにも疎いのかと、書きながらつくづく思ってしまった。常玉は台湾でとりわけ人気画家だが、アジアでは、インドネシアやシンガポールにもファンとコレクターが多い。中国ですら常玉のことを語りはじめたのに、日本では未だに、どんなメディアにも語られたことがない。


昨日の午後、ベトナム美術の専門家のジャン・フランソワ=ユベールさん(サザビーズ、クリスティーズのアドバイザー)と会ったが、ユベールさんも同じようなことを言っていた。

「東京がアジアのアート・キャピタルにならなかったのは、日本が日本という国のシステムの中しか見ていなかったからでしょうね、残念ながら…」。


「アートというのは、鏡だ」とユベールさんは言っていたけど、確かに美術そのもの、そして美術に対する言説には、帝国主義的な要素とか、ジェンダー的なものとか、オリエンタリスム的視線とか、抵抗手段とか、様々な要素が織り交ぜられていて面白い。日本がアジアン・アートから宙吊りになってしまっているのも、単に経済的な理由だけでなく、明治時代から頭に叩き込まされてしまっている脱亜入欧的なスノビズムを日本という国が払拭できていないのが理由のような気がする。


ユベールさんの話を聞きながら、思い出したのは漫画美術館の話だった。麻生首相とその近辺の人々は、漫画やアニメの他国(とりわけ西洋)への影響をもって、日本の文化力を証明しようとしているが、それはオナニスムそのもので、カッコ悪いことこのうえない。

第一に、文化の影響力というのは、水のように高いところから低いところに流れるものではない。第二に、漫画がすばらしい文化であることを日本政府が叫ぶ必要は全くないし、叫べは叫ぶほど(=ヘゲモニーを作ろうとするほど)、しらけてしまうのが道理であることを知るべきだ。政府が叫ばなくても、国境を越えるものは、勝手に越えるのだし。

 

LE PHOさん

 

話が逸れたが、20世紀のベトナム絵画も、現在、最も注目されているドメインの一つなのだそう。10年前に比べて、価値が10〜20倍になっているというからすごい。それに、ベトナム人はお金を海外に持ち出せないので、買っているのは周囲のアジア人なのだとか。

 Le Phoさん

 

この絵は、Le Pho(黎譜)さん(1907-2001)のもの。
観音様とマリア様が合体したような美しさと、 シルク画の優しさがなんともフェミニンでいい感じ。
フォーさんはハノイの美術学校の最初の卒業生で、30年代にパリに移り、以来、死ぬまで一度もハノイに帰ることはなかったという。彼はトンキンの王様の子孫で、イラストレーターのPierre Le Tanさん(むかし、『翼の王国』でイラストを描いていたこともあった)はフォーさんの息子さんなのだとか。

Pierre le Tan さん

フォーさんの奥様のポレットさん(生粋のパリジェンヌ)はご健在で(95歳というけど信じられないほど美しく聡明な方だった)、彼女に招かれてフォーさんのアパルトマンに行った。

アトリエはそのままで、フォーさんが敬愛していたというボナールとマティスの写真が飾ってあった。


若き日のフォーさんの自画像

1931年の植民地博覧会のアートディレクションをしているフォーさん。


1931年のパリの植民地博覧会以来、ベトナム近代絵画は、とにかくすごい成功をおさめ、未だに当時のコレクショナーのお子さんやお孫さんが博覧会当時の絵を大事に持っていることもあるという。

しばらく、フォーさんとその仲間たちの軌跡をできるかぎり追ってみようと思う。

| にむらじゅんこ | パリ | 18:41 | comments(5) | trackbacks(19) | pookmark |
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Pierre Le Tanさんのイラスト、好きでした。フォーさんの絵もなんともいえずいいなあ。特に自画像...
『...脱亜入欧的なスノビズムを日本という国が払拭できていない』っていうのはほんとうに同感で、それはアートに限らずあらゆる面でそうですねえ。すごく恥ずかしくてイヤなことです。
フォーさんとその仲間たちの軌跡、楽しみにしています〜。
| kadoorie-ave | 2009/07/13 10:38 PM |
adoorie-aveさん、おひさしぶりです。そうですか! ピエール・ル・タンさんがお好きだったとは! 彼は三年ぐらいまえにスペインのソフィア女王美術館で大規模な個展をやっていらい、快調みたいですよ。
今日はマラケッシュなのですが、真夏のマラケッシュは暑くて死にそうです…。
| junq | 2009/07/14 2:21 AM |
じゅんこ様
初めまして。昨年、国立東京近代美術館の「昨年、東京国立近代美術館の「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 」で常玉の絵を数点見て感銘を受け、こちらのサイトにたどり着きましたが、日本語のサイトにには数えるほどしか情報がありませんでした。
私自身は今年の7月に、台湾の故宮博物院で北宋画家の范寛の山水画を見に行き、また昨日は東京の森美術館でベトナム人アーティストのディン・Q・レ展を見て、遅ればせながらアジア美術の奥深さにどんどん惹かれています!もっと若い頃から興味を持てたら良かったのに…。
Le Phoさんの作品、素敵です。他のページも見応えがあって面白い記事ですね。
こちらのブログをこれから読み込んでいきたいと思います。
| tam | 2015/09/06 11:48 PM |
tamさん、はじめまして!
Tamさんのイラスト、素敵ですね。拝見させていただきました。好きです。
私も、アジア美術にいま夢中です。現代もすきですが、近代に魅かれます。いま、ちょうど、mai thuという画家についての論文を書いているところでした。ブログは2011年3月ぐらいから、あまり書いていないのですが、よろしければ今後も是非!
| junquo | 2015/09/07 7:26 AM |
お返事ありがとうございます。
東京下町のレポも他には無い視点でとても楽しいですね!
これからも楽しみにしています。
| tam | 2015/09/09 12:13 PM |









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